2013年4月に関西学院大学神戸三田キャンパスに設立された、アカデミックコモンズに所属するプロジェクト団体SHADECOR(シェイデコ)。「『学習』と『憩い』と『学生活動』の融合」をコンセプトとし、主にプロジェクションマッピングの制作を行う。関西学院大学でオープンキャンパスやクリスマスイベントなどでの投影や、外部機関の依頼も含め、年に5回ほど作品を披露。また、それだけではなく3Dプリンターなどを用いたインタラクティブコンテンツ制作からイベントの開催まで幅広く行っている。自由に作品を作りたい、多様なプロジェクトに挑戦してみたい、クリエイティブな発想を活用したいなどの様々な想いを持った29人が集まり、活動を続けている。
―大阪城が燃えている。ありえないとわかっているのに、確かにその光景が目の前に映し出されている。そして人々はその作品に魅了され、世界観に引き込まれる。 そこになかったはずの新たな物語を生み出す、プロジェクションマッピングという映像作品をご存知だろうか。その秘めたる無限の可能性に魅了された大学生達。きっと、あなたも彼らの世界観の虜になるはずだ。
輝きができるまで
ひとつの作品が約15分ほどで構成されているSHADECORのプロジェクションマッピング作品。一見短いようだが、その制作には3か月を要するという。ほとんどのメンバーが初心者からスタートし、先輩の熱心な指導のもと成長していく。 まずは全員で最も重要な、作品の軸となるテーマを決定する。そこから、そのテーマに沿った音楽を探し出し、動画編集チームとその土台となる画像作成チームに分かれて制作開始だ。さらに、メンバーに曲が分担され、ここからは主に個人制作となる。ひとつの作品として一貫性を持たせるため、テーマを大切にしながらパソコンと向きあう作業が続く。特に苦悩することは、曲のリズムと画像の動きや、頭の中のイメージと実際の映像にズレが起きてしまうことだ。それらを乗り越えて、納得のいく作品が完成した瞬間には大きな達成感を覚え、やりがいを感じるという。やはり、プロジェクションマッピングが好きだと。誰かにこの作品を届けたいという想いが生まれる。
大学生ということ
彼らは設立以来、様々な依頼やテーマに沿って丁寧に作品を作り上げてきた。と同時に、新たなことに挑戦し、進化を遂げてきた。例えば、万博の誘致活動、幼稚園での上映会、他の学生団体とのコラボなどの目を見張る実績の数々がある。しかし、彼らの本業は大学生。学業と両立しながら、決して十分とはいえない設備、慣れない作業の中で試行錯誤を繰り返してここまできた。そんな彼らの作品に魅了される人はもちろん、学生だけではない。兵庫県丹波市柏原の織田祭りの前夜祭では、その評判を聞きつけて2日間で約1000人が集まった。関西学院大学内の投影でも作品を一目見ようと外部から沢山の人が訪れる。彼らは言う。「興味を示してくれてもいざやってみようって人は少ない。」それでも挑戦するから、見る人に感動を与えることができるのだろう。自分たちの作品は多くの人に届いている。そう感じるからこそ、SHADECORは進化し続けることができるのだ。
化学反応を起こす
「どんなにきれいな建物でも夜は暗くてその素晴らしさが伝わらない。でも、プロジェクションマッピングの力を利用すれば、たとえ暗闇だったとしても、それを逆手にとって新しい魅力を私たちの手で作り出すことができる」と代表の西川さんは語る。そんな彼女に今後の目標を伺うと「映像をただ映すだけじゃなく、レーザーや光を多用するなど新しいことにも挑戦していきたい」と答えてくれた。 プロジェクションマッピングとはそこにはなかったはずのひとつの物語を作り上げるということだ。平面を立体的に見せる。曲、リズムから映像をイメージする。幾何学的な模様の組み合わせからインスピレーションを受ける。音楽を聴いて思い描いたストーリーを形にする。このようにして、メンバーの豊かな発想が組み合わさったときに化学反応が起こり、作品が生み出される。それが彼らの、SHADECORの魅力である。
新たなステージへの挑戦
では、建設現場とプロジェクションマッピングを組み合わせるとどのような化学反応を起こすことができるのだろうか。まだ、挑戦したことのない新たなステージへの招待状が彼らのもとへ舞い込んできた。「工事現場特有の仮囲い、製作途中のトンネルを活用してみたい。」「ポリッドスクリーンと呼ばれる、背景の見える透明スクリーンに映像を投影することで実際にその場で物事が起こっているように映し出すのはどうだろう」とまだ見ぬ計画の話題に村本建設さんも交えて花が咲いた。もし、実現したら彼らはどのような作品を披露してくれるのか。秘められた無限の可能性への期待に胸が躍る。気が付くと、既にSHADECORの世界観の虜になっている自分がいた。
注)プロジェクションマッピング・・・コンピューターで作成した映像をプロジェクタ等の映写機器を使って建物や物体、空間に映し出し、音と同期させる技術
注)インタラクティブコンテンツ・・・双方向の形式でやり取りするコンテンツ