2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催まで残すところあと1年!いよいよ迫ってきた万博に向けて『Dialogue Theater - いのちのあかし - 』のパビリオンに携わっていらっしゃる村本建設の大田様にお話を伺ってきました。

©Naomi Kawase / SUO

インタビューの風景

建物の時間や記憶を再現する

村本建設様が携わっているパビリオン『Dialogue Theater - いのちのあかし - 』について詳しく教えてほしいです。

今回の万博パビリオンには、8人のプロデューサーが手掛けるシグネチャーパビリオンがあります。その一つとして、映画作家である河瀨直美さんが「いのちを守る」をテーマにプロデュースするもので、当社が工事を担当しています。

このプロジェクトでは、奈良県、京都府にある廃校を万博夢洲会場に再構築します。人々が集い、記憶の道をたどり、新たな出会いや対話を通じて分断をなくす、次世代の継承を目的としたパビリオンです。

旧折立中学校南棟(奈良)

旧細見小学校中出分校(京都)

このプロジェクトに関わる中で、河瀨直美さんとも何度か話す機会があり、河瀨直美さんからは「人間だけでなく建物も生きており、建物の時間や記憶が存在するので、それを再現してほしい」ということで、それが村本建設の重要な役割かなと考えています。

再利用することを目的とした解体と、壊すことを目的とした通常の解体で異なる点はありますか。

一般的な解体工事は重機を使用し解体を行うため、騒音や振動・粉塵を極力抑えるよう気を付けながら工事を進めています。

一方、今回の移築解体工事においては、部材をそのまま再利用しなければならないため、部材一つ一つ、壊れないよう釘一つ一つを手作業で丁寧に解体を行うため、通常より神経を使うところが一番の違いだと思います。

すべて部品を再利用されるのですか。

ねじなどは錆びてしまっていることもあるので使えないこともありますが、構造体をつなぐボルトなどは新しく補強するなどして再利用しています。古い部材は専門業者の方が、別の場所で、きれいに美装してから使うことになりますが、基本的に屋根の瓦・外壁材・内壁財・床などはできる限りそのままの形を活かして再利用します。

大田様がこのパビリオンに関わる中で新しく経験されたことや、やりがいを教えていただきたいです。

私自身、木造建築物の工事、再構築工事の経験がないため、全てが初めてです。

また、解体工事期間中に学校の卒業生や地域の方々が見に来て下さることがあり、当時の思い出や工事の完成を非常に楽しみにされていることをお聴きしました。

この工事では、中学校に植わっているイチョウの木も持っていく予定なのですが「このイチョウの木でこんなことをした」といった思い出話や、「万博会場では、来場者にはどんな風にみられるんやろう?」などの声もあり、地域の多くの方々の期待・注目を浴びながら工事をしています。

移設されるイチョウの木

先ほどのお話でイチョウの木が出てきたと思うのですが、どのような形で搬入されるのでしょうか。

イチョウの木の周囲を掘ってみたところ、根がかなり張っていたので、直径3メートルぐらいに根を切って丸めている状態です。

また、施工中にメディア関係の方もたくさん来られたこともあり、それだけたくさんの方に注目されている工事であることを実感し、それもやりがいにつながっています。

大田様はこの万博が開催したら、このパビリオンに誰と訪れたいですか?

一番は家族に見てもらいたいです。万博という特別な工事に携わっているので、両親に「こんな工事したよ!」という感じで、見てもらいたいです。

このパビリオンは記憶の継承や人々の対話がモチーフになっていると思いますが、大田さんが、私たち学生に伝えていきたい思いはありますか?

私は「対面で会って話す」ことの大切さを伝えたいです。今の世の中はITが進み、文字で伝えていくことが多くなりました。私自身が大学生の時にそれをすごく感じていました。コミュニケーションの形態が変化している中で、文字だけでは伝わらない「表情や感情・会話のリズムなど」が存在し、一番コミュニケーションの核の部分だと私は思います。対面だからこそ感じられる温度感や感情というのがありますし、私自身、就活時期にコロナが蔓延し始め、いざリモート面接となった時に自分のことを伝える難しさを実感しました。時代は変わりつつあると思いますが、会って話すことを学生の皆さんには大切にしてほしいと思っています。

廃校となった校舎を夢洲へ移築中!