新しいものづくりと職業選択

 平成という一つの時代が終わりを迎えようとしている。バブル経済や失われた20年、リーマンショックなどを経験した激動の時代は幕を閉じ、時代は既に明日の方向を指している。時代の変遷とともに、人々の考えかたも変化していく。例えば従来的な理系、文系に分けた学習から、文理の壁を超えた総合的な学習が考えかたとして覇権を握り始めている。
 また、産業にも大きな変化が起こりつつある。日本はかつて「ものづくり大国」と呼ばれ、第一線で質の高いものを作り出して来た。しかし、近年その風潮には影が差している。人材の不足、リソースの欠落など、原因は様々である。
 今回は日本のインフラを支え続けている建設業界の一翼を担う「村本建設」の倉田雅司氏にお話を伺った。倉田氏は元来文系の専攻でありながらも、建設業というものづくりの現場に携わっている。そのような経歴を持つ倉田氏は職業選択をどのように捉え「ものづくり」に携わっているのであろうか。

倉田さんは学生時代に何を専攻されていたのですか。

 私は大学受験の際に数学が苦手だったこともあって、数学を用いない文系の方面へ進むことを決めたんです。当時は司法系の職業に就きたいと考えていたので法学部を受験して、大学へ進学しました。そのため、入学当初は建設系の会社に進もうとは、まったく考えていなかったんです。

その後、就職活動ではなにを基準にお仕事を選択していったのでしょうか

 大学では法律を勉強していたのですが、アルバイトでは不動産関係の営業をしていました。そこでのアルバイトが非常に楽しかったことや、生活のマストファクターである「衣食住」の「住」に携わる仕事に興味が湧きはじめたことから、就職活動では不動産業界を志望しました。建物を購入することは、人生の中でのビッグイベントですよね。そこに携わってみたい気持ちが自分のなかで大きくなっていたんです。そのような経緯から新卒で不動産関係の仕事に就きました。しかし、不動産関係の仕事をするうちに、今度は「建物を紹介すること」から「建物を実際に作ること」へと関心がシフトチェンジしていきました。もともと私は幼少のころからプラモデル作りなど、なにかを作ることが好きだったんです。だから、なにかものを作る仕事に携わりたいという気持ちがあり、現在は村本建設で働いています。

村本建設では、どのようなお仕事をされているのでしょうか

 当初は予算を管理する事務の部門に配属されました。いわゆる建設現場に特化した経理の仕事ですね。現場と会社の中間に立って、お金の管理をしていました。その後、営業の部署に転属し、現在もそこにいます。

建設の現場に携わることによって「ものづくり」に対する意識が変わったことはありましたか

建設現場

 まず驚いたことは規模の大きさです。例えば麹町にある弊社のビルを建てるとしたら、数千人の人間が関わることになります。現場にいる全員が、同じ建物を完成させるという同一の意識を持って仕事をすることになるんです。このことはとても興味深く感じます。また、建設の大元は本当に一枚の設計図からできています。そこから出来上がって形になっていく過程は非常に感動します。建設に携わっていると、幼少期にプラモデルを作成した際に、大変嬉しかったことを思い出しますね。幼少期のものづくり体験で感じたよろこびをそのまま、建設という仕事で味わうことができているんです。作るものの大きさは変われど、感覚は変わっていないと思います。

日本の「ものづくり」はどのように変化していくべきだと思いますか

村本建設 東京支店第二営業部 倉田さん

 そもそも近年「ものづくり」に対してマイナスなイメージを持っている人が多くなっている気がします。例えば「子どものなりたい職業ランキング」に「大工さん」がランクインすることも少なくなっていますし、「建設業界に携わっている」というと、なんだか泥だらけの汚い現場で休みなく働くといった印象を持つ人が増えています。そのため、我々は「ものづくり」をより身近なものとして捉えていけるような土壌づくりを課題としています。政府の働き方改革とも連動して、休日を増やし、今よりも作業効率をあげていくといった努力をしていき、「ものづくり」業界のイメージをクリーンにしていくことが不可欠です。「ものづくりに携わりたい」と思う子供は少なくなりましたが、まだプラモデルを作ることが好きな子どもは多いですよね。だから、そのような「ものづくり」への原初的で潜在的な欲望を引き出せるようにアプローチしていきます。

時代に応じて「ものづくり」に携わる仕事も変化しているんですね。

 そうですね。だから、これから就職活動をされる人たちも、変わりつつある日本の仕事を幅広くみていくことが大切だと思います。これからは文系や理系という幅を取り払った新たな時代になっていきます。「職業選択の自由」という言葉もあるように、選択の幅を狭めず探していけば、自分に合う仕事が見つかるはずです。もちろん雇用条件は良いに越したことはないですが、本当に自分のやりたいことを見極めて広い目で見ていければ良いですね。建設現場には理系の人が多いのですが、今後は文系の現場担当者が増えても面白いと思います。むしろ文系の人の従来的な工程を覆すような発想で、現場に新しい風を吹き込んで欲しいです。だから、文系に入ったからマスコミ関係に志望しようなどと狭く考えてしまうことは非常にもったいないので、自分のやってみたいことにチャレンジしてみてください。

【倉田雅司 くらた・まさし】
大学卒業後、不動産業界を経て、2005年に村本建設入社。東京支店予算管理グループへ配属。2010年より東京支店第二営業部所属。現在は同部署の係長を務める。

【村本建設株式会社】
「新しい時代の変化に機敏かつ柔軟に対応し、より大きな価値を顧客にて提供する」を経営理念とし、全国に展開する建設会社