ある日…

フリペ員のN君は、マンガが大好きすぎて、こんなことを言い始めた。

「二次元に、帰りたい。」

いくらなんでも、それは厳しい。そこで今回、我々は彼の願いを少しでも汲み取るために、マンガに登場する家を実際に作ってみるこことにした。しかし、ここにはとても重大な問題があった…。そう、我々は私文大学生。建設に関する知識をもつ者は誰一人としていなかったのである!

そんな時は村本建設さんだ!

村本建設とは、麹町に実在する建設会社で、我々のようなしょうもない学生に救いの手を差し伸べ真剣なアドバイスをくれる素晴らしい会社である。

なんと、本誌3年連続3回目の登場となる村本建設さん。「新しいキャンパスが欲しい」、「家をつくりたい」と無理難題をかなえていただいた挙句、ついに今年は

次元を越えます。

ということで村本建設さん、今回もよろしくお願いしまーす!いつもいつもごめんなさい……。

会議開始! お願いします!

(左)白井 新さん (右)小島 謙二さん

①どの家をつくるべきか

まずは村本建設の小島謙二さんと白井新さんに、我々が頭を絞ってセレクトしたマンガの家々を紹介する。かなり自信があったが、村本建設の皆さんの表情は硬い。会議を始めたばかりなのに、不安がこみあげてきた。

②あの名作漫画家に決定!

「この中だったら、作りやすいのは平屋なので『ちびまる子ちゃん』の家かなぁ。」ドラ〇もんやクレヨン〇んちゃん、様々な家を提案したが、それらは全て2階建てであった。これでは組み立てが難しいことが判明。これで制作する家が『ちびまる子ちゃん』の家に決まった。

③スチレンボードという神素材!

続いて家を作る素材について伺った。「スチレンボードを使うのがいいと思うよ。あと、床や壁の再現は普通に素材をコピーしたほうがいいよ。」スチレンボードとは発砲スチロールを紙で挟んで作られたものらしい。そんな素晴らしい素材があったとは。床や壁の装飾を含め、こちらもすぐに決定した。

④サイズ感が大切

更に、サイズ感についても教えていただいた。中の家具まで作るとなると、実際に建てるサイズは最低でもA3用紙ほどは必要であるらしい。

諸々の教えを請いながら、なんとか方向性が見えたところで、会議終了!

村本建設さんからのアドバイスをまとめると…

其の一、壁はスチレンボードで作るべし
其の二、壁や床は素材をコピーすべし
其の三、サイズ感はきもち大きめにすべし
それでは早速作ってみよう!

ちびまる子ちゃんのお家
大学生が二日二晩をかけて作りました

村本建設さんからのアドバイスも受けられた。これだけ用意があればいけるだろうと考えた自分たちを後に恨んでやまなくなった。 そう、これからご覧いただく記録はサブタイトルの通り我々の約40時間の記録である。その間の製作員の睡眠時間は3~5時間。 さらに、途中でサークル全体での活動があり作業を中断せねばならなくなり本当に違う次元に飛んでいってしまいそうなほど大変であった。 ただ、だからこそ見てほしい。私たちの努力を。ぜひその目に、焼き付けてほしい。 それでは、村本建設さんに教えてもらったポイントに沿って、私達の軌跡をご覧いただこう!

▲まるちゃんの家の設計図(『名作漫画の間取り』より)

ポイント①
壁はスチレンボードで作るべし

まずはスチレンボードを確認。カッターナイフ切ることができ、段ボールや発泡スチロールよりも薄くて丈夫な素材であった。このスチレンボードをもとに、土台や家の壁などの基本的な部分を作っていく。スチレンボードにはスチレンボード用のノリがあり、それで切り貼りしていく。カッターナイフで切ることができるといっても段ボールなどよりもかなり丈夫なため予想よりも少し時間がかかってしまったが、この時点ではまだ順調だった。

ポイント②
壁や床は素材をコピーすべし

次に拡大した図面にそれぞれの素材を貼り付けていく。もし村本建設さんに相談せずに床や壁の装飾を絵で描いていたらと想像すると、恐ろしくなった。家のそれぞれの箇所をマンガやアニメのシーンをもとに再現していくと、想像していたよりも細やかに色が分かれており、貼らなければならない素材もかなり多かった。コピーを使用したことで絵よりもむしろリアリティが増し、少し家を作っている実感が湧いてきた。……ここまではおおむね順調だった。

ポイント③
サイズ感はきもち大きめにすべし

ここまでくれば、もうお分かりであろう。家具を作る段階になり、製作員はそれぞれにちびまる子ちゃんの家にある家具を作り出した。椅子担当は椅子を、棚担当は棚をひたすら作った。そして、いや、だからこそ気付かなかったのである。家具が半分ほどできたタイミングで、一度家具を設計図の上に置きに行った。すると……。

 

▲家具を置いた図。とても、とても大きかった……。

そう、家具の寸法を間違えたのだ。いや正しくは我々が見立てた家そのものの大きさが小さかった。村本建設さんに具体的なサイズを聞いていたにもかかわらずの失態である。しかも、なんとこの家の寸法を行ったのは前ページで「二次元に、帰りたい。」と言った張本人であった。ここにきて痛恨のミスが発覚したが、この時点既に2日目の午前3時。土台を作り直そうにもスチレンボードの残りが少なく、もう買いに行ける時間でもない。そして、家具の大きさの調整を始めたのであった……。

玄関のすぐ横にある台所。どうにか収まったが地味にシンクの部分が難しかった。

まるちゃんたちが普段ご飯を食べている居間。実はテレビの下の台の中まで細かく作られている。

窓には枠を付けアクリル板を使用。こうすることでかなり家っぽさが向上した。

家具を調整し、いよいよ組み立てた家の中にはめていく。そして……

完成!

全体像。それぞれの部屋の配色も上手くいき、サークル員たちの努力が実った。

2度目の朝日を見ながら家具の最終調整を行っているとき、ふと「俺たちは何をやっているんだろう?」というとても虚ろな疑問が浮かんだ。楽しい取材のはずなのに、男4人で炬燵を囲み黙々と制作する時間は次第に苦痛を増していった。しかし、完成した時のうれしさもひとしおだった。まるで本当にキャラクターが住んでいるように再現でき、大成功だった。村本建設さん、本当に本当にありがとうございました!